新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって経済活動が世界的に減速している。テレワークやオンライン教育が普及し、人々は無意識に密閉・密集・密接の3密を避けるようになった。ソーシャルディスタンスの確保や衛生面、安全面の要求も、企業活動に大きな影響を与えている。

さまざまな業界で大きな課題がコロナ禍によって生じているが、このブログではロジスティクス(物流)業界にフォーカスして、DX(デジタル変革 or デジタルトランスフォーメーション)について考えてみる。

 

 

■ ロジスティクス業界が直面している3つの課題

もともとロジスティクス業界では、製造業におけるインダストリー4.0の普及などにより、インターネットを活用するグルーバルに分散したサプライチェーン構築への変革を迫られていた。また、アマゾンをはじめとした小売企業が仕掛けるオンラインビジネスの台頭により、クロスボーダーの電子商取引が増加。配送サービスの利用を前提とした購買活動へとシフトしている過程にあった。この動きをCOVID-19がさらに加速させる格好になったのである。

世界のロジスティクス業界は、より速く顧客に商品を届けること、宅配便の増加などを背景にしたボリューム増への対応、オンライン販売される商品数の急増による物流の仕組みの複雑化という3つの大きな課題に直面している。すなわち、DXの実行が待ったなしで求められているということだ。

 

■ 日本で求められる物流における新たなビジネスモデル 

世界的な流れに加えて、日本には独自の課題も存在する。少子高齢化による人材不足と、顧客の非常に高い期待に対応することの2つである。

1つ目の人材不足への解決策は、地道ながら、人材リソース不足でも対処できる業務プロセスの構築にある。具体的には、業務プロセスの再定義、人件費と運用コストの削減、配達の質とスピードの両立、新たな配達対象荷物と種類増加への対応などが鍵となってくる。

2つ目の課題である、顧客の非常に高い期待に対応することへの解決策は、顧客体験を継続的に改善することによって、新たなビジネスモデルを創造することにある。グローバルとローカルのロジスティクスベンダーの機能の統合、物理的な店舗ネットワーク拡充によるタッチポイント増、Uber EATSのような物流における「ラストワンマイル」の提供などが挙げられる。

2016年9月に開始したUber EATSは、消費者がスマートフォンで飲食店の料理を注文すると、登録している一般の人が配達員としてデリバリーするというサービスだ。決済はスマホとクレジットカードを通じて完了しており、配達員は実際に、ただ配達するだけである。 従来の出前ではなく、一般の人の時間を活用する新たなビジネスモデルの登場である。

 

■ パートナー企業とともに、ロジスティックスサービスを根本的に見直す

DXにCOVID-19の要件が加わったことで、ロジスティックスサービスを提供する企業は、新たな発想によるサービスの実装を迫られる。

スマートロッカーやブロックチェーン活用などによるスマートピックアップ、IoTによる輸送状況の管理や運送事業者の統合、高度なWMS(倉庫管理システム)やRFIDによる在庫管理、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とOCR(光学文字認識)の組み合わせやチャットボットなどが例として挙がる。このほか、AIコンテナによる自動検収や梱包/ラベリングロボットの活用など、試してみたくなる新しいワザはたくさんある。

しかし、自社でこうしたDXを進めたいと思っても、ノウハウもリソースもないという企業が多いのが実情だ。そこで利用したいのが、パートナー企業が持つ解決策である。

パートナーを見つける際には、日本、欧州、米国、アジア太平洋などグローバルのサプライチェーンで、ロジスティックス企業や運送、小売り、製造業などの顧客にサービスを提供してきた実績を持っているかを確認したい。

また、24時間365日にわたり、質の高いサービス提供が担保されるかもポイントである。そのため、グローバルに物流スペシャリストやエンジニアがプールされており、ビジネスの状況に応じて、柔軟かつ迅速に対応してくれる企業であるかもパートナー選定の鍵を握る。

もう1つは、AWSやMicrosoftをはじめとするテクノロジーのトップ企業とパートナーシップを結んでいる企業を選ぶことである。優れたDX手法を持つテクノロジー企業と連携していれば、それをシンプルに導入するだけで改革が完了することも考えられるからだ。

有力なパートナーを得ることにより、例えば部品のサプライチェーンの分析や小売業の店内の顧客分析、AIベースの予測エンジン導入など、自社が持たない専門的な知識を使えるようになるなど、さまざまなメリットがある。

 

■ Withコロナ時代のロジスティクスを展望

コンサルティングのサイモン・クチャー&パートナーズは、物流・輸送業界が「危機的な状況」に瀕していると評価した。実際に、旅行需要を失った航空業界は、壊滅的な打撃を受けている。一方で、消費者向けの宅配需要は堅調だ。7月31日に2020年4~6月期決算を発表したヤマトホールディングスは、コロナ渦でも営業利益、経常利益とも拡大させている。法人向け需要の落ち込みを、消費者向けが補ったという。

今後のロジスティックスを展望すると、関連する領域で、次のようなパラダイム変化が考えらえる。

  1. 安全第一のサプライチェーンへ
  2. 感染対策を重視
  3. 地方分散化の影響

 

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【Written by FPTジャパンホールディングス 2020年8月17日】