医療業界は、ビッグデータ分析とそのアプリケーションの価値が大いに認められる有望な分野の1つとして浮上しています 

 

 

 

ヘルスケア分野におけるビッグデータの産業ニーズ 

ヘルスケア分野は、患者ケア、記録管理およびコンプライアンス要件によって大量のデータ生成することが歴史的に知られています。ヘルスケアシステムでは、データ生成はすでにエクサバイトレベルに達しています(1エクサバイト=10億ギガバイト) 

医療保険の需要増加、医療費の上昇、労働集約的なファイリングプロセス削減に対する需要の高まりなどにより、医療提供の全体的な有効性と品質向上のために、ビッグデータと呼ばれるこの大量の情報をデジタル化して、効果的に分析する必要性を促します。  

しかし、ビッグデータセットは膨大で複雑であるため従来のデータ管理ツールでは扱いづらかったり、扱うことすらできない場合あります。ヘルスケア業界におけるビッグデータ分析の採用が重要になるのは、この点です。実際、2022年までに医療分野のビッグデータのグローバル市場は、年平均成長率22.07%で増加すると予想されています。  

 

ヘルスケアがビッグデータ分析から価値を引き出す3つの方法  

臨床分野におけるビッグデータ分析の用途は、以下のように3つあります。  

1.パーソナライズ化された療の実現  

患者は多くの場合、個人に合わせた提案を受け、妥当な医療費で幅広い医療サービスが利用できることを望んでいます。正確な治療あるいは患者個人にあわせた治療を行うことは、患者のライフスタイル、遺伝学などを考慮しながら、最も適切な治療コースを決定する新しいアプローチです。ビッグデータは投薬管理や患者監視など、患者一人ひとりにカスタマイズされた治療を提供する機会を促します。例えば、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大は、世界的な医療システムを逼迫させ、病院に対して、予定していた治療手術の延期を促す結果となりました。ビッグデータ分析を導入したモバイルアプリケーションは、手術を待っている患者ごとリスク評価を実行し、医学的緊急性のレベルに基づいて患者の優先順位を決定することができます。    

2.病院運営の最適化  

ビジネスリーダーたちは、ビッグデータを利用して消費者の行動パターンを特定し、顧客中心のビジネスソリューションを生み出してきました。臨床分野では、ビッグデータ分析を導入してパターンを特定し、病院運営を最適化することができます。例えば、フランス・パリの4つの病院では、さまざまソースからの大量データを使用して、各病院の患者数を日々予測しています。    

病院管理におけるもう1つの差し迫った課題は、データセキュリティです。患者の記録は重要な個人情報を含むため、サイバー攻撃の標的になります。ビッグデータ分析は、サイバー犯罪を示唆する行動やネットワークトラフィックの変化を検出して、フラグを立てることができるため、データセキュリティ強化が期待できます。  

3.早期診断と治療の推進  

新しい疾患変異体の脅威と、近年のデータ技術の進歩により、早期診断が大きな注目を集めています。従来までの診断では、医師は病歴や臨床検査など患者の個人データに依存していました。   

しかし現在は、多数の電子カルテから抽出したデータを利用することで、DNAおよびRNAシーケンシング、メタボロミクス、プロテオミクスなど、複雑なアルゴリズムにより、意味のある診断情報を持つパターンを特定することができます。この大量のデータはまた、診断・治療を受けた過去の患者グループと比較し、適切な治療方針の決定にも利用可能です。   

ヘルスケア分野におけるビッグデータ分析の採用は、医学的機密性、予算の制約、データサイロなどの障害により、他の業種よりも遅れをとっていることは否めません。しかし、そのような課題があるにもかかわらず、ヘルスケア分野にもたらすビッグデータ分析のメリットは、ますます明らかになってきています。 

 

その他のテクノロジー記事に興味のある方は、こちらをご覧ください。 

 

【Written by グエンダンハ・フオン 2020年12月22日】

 

【Reference】