この10年間でAIが進歩を遂げ、さらに膨大な投資がなされてきました。McKinsey(2016)によると、2016年、AIへの投資額は260億ドルから390億ドルに増加しています。

サプライチェーン分野では、大手企業がAIを活用して、サプライチェーン管理における意思決定を強化し、自動化しています(ガートナー、2018年)。ガートナーによると、調査対象となった企業の64%が、サプライチェーンビジネスにAIを使用しています。2019年、サプライチェーン分野の技術トレンドの1つは、AI技術を使用して人間のパフォーマンスを強化することです。AIのおかげで、需要予測、予知保全、生産計画などの様々なサプライチェーンプロセスが自動化できるようになりました。


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FPTでも、倉庫最適化、ヤード管理システム、岸壁クレーンの自動追跡、チャットボット、AIによる視覚的検査など、複数のプロジェクトにAIを適用しています。これらについて以下で詳細に説明します。

 

倉庫最適化

お客様はロジスティクス業界の大手企業であり、精密電気部品、OA機器、電気通信機器、電子機器、機械部品を製造しています。彼らの日常業務は、様々な倉庫から様々な種類の商品を集めることです。集荷作業は時間がかかり、予想通り効率的ではありません。

こうした問題を解決するために、FPTは以下の2つの目標をかかげ、自動データ分析サービスのコンサルティングとアセスメントを実施しました。

  • 非効率的な集荷の根本原因の特定:FPTは過去のログデータを分析して、商品の種類ごとに集荷時間に影響する要因を特定します。分析結果によると、棚に商品を積み込むことが最大の影響を与えることが判明しました。現在の積み込みプロセスは一連の基本的な規則によって管理されています。これらの規則は時代遅れで、最適化されていません。したがって、非効率的な商品積み込み作業が集荷作業を困難にしています。
  • 倉庫の空きスペースを計算するためのアルゴリズム設計:空きスペースは、棚へ積み込む商品の量を推薦するエンジンにとって重要なインプットとなります。

FPTは、2つの自動データ分析ソリューションを設計および実装し、2つのソリューションを既存の倉庫管理ソフトウェアに統合しました。

  • どんな時にも倉庫の空きスペースを計算できるようにする自動データ分析。
  • 特定の時点での倉庫の実際の状態に応じて、特定の種類の商品に対して最適化された商品積み込みオプションを推奨するAIエンジン。

このソリューションにより、お客様の期待を超える集荷時間15%短縮を達成しました。これにより、運用コストやITスタッフの工数削減ができ、節減した工数を付加価値の高い作業に回すことも可能となりました。

 

ヤード管理システム

このプロジェクトを行ったお客様は多国籍FMCG(日用消費財)メーカーのベトナム支社です。ヤードでの発送プロセスは、手作業が主であり、非常に時間がかかります。また、発送ゲートでは、ピッキング票と照らし合わせた荷物チェックを手作業で行っており、この工程は約45分かかります。ヤードはパレットのレンタル料金を支払う必要があります。その後、商品はパレットに積まれ、フォークリフトでトラックに積み込まれます。衝突や労働者の負傷のリスクはかなり高いです。また、トラックの運転手はセキュリティゲートを通った後にしか正確な発送ゲート番号を知ることができません。これにより、交通渋滞を発生し、運転手にストレスを与えます。電子メールと電話を介して行われる運送業者とヤードオペレーターとの間のコミュニケーションは遅い上に、エラーが発生しやすく、柔軟性が低くなります。

FPTは、荷物のチェックとトラックへの積み込みを半自動化するためにヤード管理システムと呼ばれるソリューションを提案しました。SKU番号は荷物に印刷されており、コンピュータービジョンを使用してチェックすることができます。ほとんどの場合、荷物はトラックに積み込まれた後にパレットから降ろされます。そのため、フォークリフトをベルトコンベアに置き換えることができます。ヤード管理システムでは、AIを適用することで、コンピュータービジョンによる荷物の検品と数量の自動チェック、運送業者の運転手と会計担当者に送信される通知の管理、および担当者間のコミュニケーションをスムーズにします。

ヤード管理システムにより、トラックあたりの処理時間を少なくとも50%削減し、フォークリフトプロセスを排除し、運転手の労力とフォークリフトのレンタル料金を節減できます。

 

岸壁クレーンの自動追跡

お客様はシンガポールの国際多目的港湾会社であり、非常に複雑な流通業務に統合ソリューションを提供しています。しかし、この港湾会社はいくつかの深刻な問題に直面しています。海港クレーンを使用してトラックと艀船の間で貨物を移動する取引先は、リフトの数に基づいて費用が請求されます。全体の運用は制御室から監視され、リフトの数は手動で記録されます。

請求書に誤りがある場合、ミスが起こった取引まで遡って(紙、ビデオなどを使用して)チェックするには時間がかかります。この港湾には、リフトの数量カウント自動化、人的誤りの削減、過去の取引の遡及スムーズ化、および最適化に向けたリフト時間の追跡が必要です。

FPTは、リフト数量カウントとクレーン操作監視を自動化する「岸壁クレーンの自動追跡」ソリューションを開発しました。システムは、すべてのクレーン操作を自動的に追跡し(コンピュータービジョンとセンサーを使用)、収集されたすべての情報を分析することにより、課金の際の各リフトのタイプ(請求が必要か無料か)を決定します。追跡情報は、さらなる可視化と最適化のために港湾のデータレイクに転送されます。

岸壁クレーンの自動追跡のソリューションは、100%の計算精度でお客様の期待に応えました。これにより、手動リフトの追跡作業を削減し、すべての運用のリアルタイム追跡を助け、管理の改善につながりました。過去の取引に対する遡及時間は約30~60分から5分に短縮されました。

 

チャットボット

お客様は、ベトナムの大手港湾会社の1つであり、世界でもトップ25の企業にランキングしています。企業運営を調査した結果、多くのプロセスを改善する必要があることが判明しました。それらの1つは、顧客とのコミュニケーション方法です。現在、商品の輸出入の際に、通関書類に問題がある場合、または輸送状況に関して質問がある場合、お客様は港湾会社のコールセンターに連絡します。お客様の要求は、電子メール、チャット、または電話などで処理されます。これらの通信方法は標準化されておらず、異なるサポートスタッフが提供する情報は誤解を招く可能性があります。

お客様は、AIチャットボットを構築し、要求をうまくまとめた定型の応答で処理することにより、コミュニケーションの方法を標準化するようFPTに依頼されました。チャットボットアプリケーションモジュールには、管理者のリストを管理する機能があります。質問を理解できない場合、またはお客様がスタッフとの直接会話を要求する場合、管理者に情報を送信します。

応答時間は非常に短く、わずか1秒以内です。会話は英語とベトナム語の2か国語で対応され、カスタマーケアシステムをより専門的にします。さらに、このチャットボットは24時間365日機能するため、スタッフの作業量を削減し、生産性を向上させます。

 

AIによる視覚的検査

お客様は、ベトナム最大の製造およびロジスティクス企業の1つです。インバウンド品質検査のプロセスは現在手作業で行われ、多くのコストと時間がかかっていました。

FPTのシステムは、AI(視覚認識)を使用して、倉庫に移動する前の商品検査をサポートします。また、生産ラインでの品質検査にも使用できます。

  • このシステムは、ラウンドチェックプロセス中に、異常な状態(へこんだ、破れた、つぶれたなど)にあるアイテムを自動的に特定できます。
  • FPTは、専用のAIアルゴリズムを開発し、AIトレーニングプロセスを実行して商品検査を実行するアプリケーションを実装しました。

FPTのAIシステムは非常に柔軟であり、異なる形状、サイズ、カテゴリの様々な商品に適用できます。お客様は、ニーズに応じて適切なオブジェクトを使用してモデルを簡単にトレーニングし、自社でシステムを改善できます。

このソリューションにより、商品検査の所要時間を30~40%削減し、人的労力を約70%削減できます。

 

(貴社におけるビジネスニーズをお聞かせください。)

 

最後に

サプライチェーンは、AI技術にとって大きなビジネスチャンスを秘めた分野です。AIのメリットは、業界の様々な大手企業によって認識されており、今後ますますAIが活用されていくでしょう。

次回の記事では、保険業におけるAIをご紹介します。

 

参考文献

1.ガートナー、2018年「Improve the Supply Chain With Advanced Analytics and AI Improve the Supply Chain With Advanced Analytics and AI」
参照リンク:https://www.gartner.com/smarterwithgartner/improve-the-supply-chain-with-advanced-analytics-and-ai/

2.ガートナー、2019年「Gartner Identifies the Top 8 Supply Chain Technology Trends in 2019」

参照リンク:https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2019-04-24-gartner-identifies-the-top-8-supply-chain-technology-0