新型コロナウイルス感染症(COVID-19) の大流行は、グローバル経済とビジネスオペレーションに深刻な影響を与えています。しかし、これによって企業が、自社の脆弱性や将来同様の出来事が起きた場合、対処のために何を準備すべきかを考える機会になります。企業は、レジリエンスを強化することで、生き残ることは可能になるかもしれません。しかし、このような困難な状況において成功するためには、俊敏性が不可欠となります。ローコードは、不確実な時代の中で、組織がより良い経営をしながら、繁栄していく道筋を提供します。

開発・テスト・改善・繰り返し

不確実性が高まっているとき、現在のあらゆる状況は非常に流動的です。そのため、最終製品の発売までに、数ヶ月または数年かかるプロジェクトは、事業開発をすすめるのに危険性があります。昨日のアイデアは、もはや今日の状況には適切ではないかもしれません。したがって、事前調査に焦点を当てて、市場や顧客の需要を深く掘り下げるのではなく、組織は、より多くのプロトタイプを用いて、仮説に基づくアプローチを実施することが不可欠です。実証実験と最低限の機能を持った製品を制作、販売し、ユーザーの要件に適合するよう、継続的に改善していくのです。

ローコードは、アイデアを迅速にテストし、反復処理できるため、継続的にアプリケーションの刷新をすすめていくことができます。例えば、ニューヨーク市の新型コロナウイルス情報サイトは、ローコードプラットフォームを使用して、72時間以内に立ち上げることができました。感染拡大がすすんでいくと、同市は人々がどのようにして感染したかを報告できるウェブサイトや、医療機器関連への寄付を管理するシステムを作成し、どちらも数日で展開しました。 欧州における新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、英国国民保健サービス(NHS)の一部門であるBexley Health Neighborhood Careは、スタッフの日々の健康状態の記録を可能にするバックオフィススタッフトラッカーアプリケーションを迅速に開発しました。その後、作業や人員配置のためのスタッフのリソース確認やインシデントレポート作成などの機能を追加し、よりよい業務運営ができるようになりました。

ビジネスモデルの変革

不確実性が高いとき、伝統的な手法はほとんど機能しません。企業が新型コロナウイルス感染症にどのように対応するかについて、米国小売大手であるターゲット社の最高経営責任者(CEO)であるブライアン・コーネル氏は最近、次のように述べています。

「今まで誰も見たことのない状況であり、この状況にどのように対処すればいいのか教えてくれる攻略本はありません。そして、私たちは毎日台本を書いています。」

アイデアを速やかにアプリケーションに変える機能や、レガシーシステムへの容易な統合が可能になったことで、多くの企業は、ビジネスモデルをローコードにシフトして、新しいスクリプトを作成しています。そして、マイナスの影響を軽減したり、競合他社に優位性を獲得したりすることで、新しいスクリプトを作成しています。そして、悪影響を軽減し、競合他社より優位に立とうとしています。

小売業は、パンデミックによって大きく打撃を受けた業界の一つです。新型コロナウイルス感染症後の世界では、オンラインでの注文がより快適と感じるようになり、消費者の購買行動は、大きく変化すると予想されています。小売業者は、顧客を維持し、惹きつけるために、eコマースプラットフォームをより注視していく必要があります。ローコードには、企業のデジタル資産の開発と強化を促進する機能があるため、このようなミッションに最適です。

このテクノロジーは、小売業だけでなく他業種の企業においても、ビジネスチャンスを実現につなげ、困難な状況を克服できるよう支援します。2020年4月、大手信用組合サービスであるLucro Commercial Solutionsは、1週間足らずで、米国政府の給与保護プログラムを通じて、中小企業がパンデミック救済ローン申請を支援するためのアプリケーションを導入しました。このアプリにより、借り手は書類作成サービスをより簡単に処理できるようになりました。Lucroは政府の融資プログラムにおいて、大規模な同業者と競合できるようになりました。

コスト削減

経費削減は長い目でみた場合、不確実性に対処するための方法としては推奨できないかもしれません。しかし、この方法は一般的で、おそらく最も簡単であるため、明日がどうなるのかわからないときには、よく使われる手法でしょう。ローコードは、企業が2つの点から、財政負担を軽減するのに役立ちます。1つ目は、このテクノロジーは高いプログラミングの専門知識を必要としないため、IT部門以外でも、ベンダーの関与なしにある程度、自社でアプリケーションを開発することができます。ITスタッフの作業負荷も大幅に減少し、事業主は、価値の高いプロジェクトに注力できるように、コアなチームだけを維持することができます。2点目は、ローコーディングには最低限のハンドコーディングしか含まれていないため、バグや技術的なエラーが発生する可能性は低くなります。さらに、コンサルティング会社であるPathFinderの調査によれば、ローコードプラットフォームは、開発時間を最大90%節約することができます。このため、メンテナンスと開発コストを大幅に削減します。

今後数年間に、新たなパンデミックがあるかどうかは、誰にもわかりません。しかし、古い格言にあるとおり、「不確実以外に確実なものはない」のです。企業が急激な変化にうまく対処する唯一の方法は、俊敏性を高め、迅速に適応していくことです。ローコードは、最初、まだニューノーマルに四苦八苦している人に有利に働くかもしれません。しかしその後は、いかなる状況においても、ビジネスの継続性とイノベーションを促進します。

 

【Written by ファム・マイ・ガン 2020年7月24日】

【Reference】