SAPに関するコンサルティングや開発・移行等の実績多数のFPTがハイブリッドグローバルデリバリー体制を採用することで、SAP S/4HANA Cloudのシステム安定化に取り組んだ事例を紹介します。本記事は、当社で働くSAP開発者が参画したプロジェクトの中で取り組んだこと、得られた経験等を中心に記載しています。

目次

 

はじめに

FPTは日本、ベトナム、タイ、スロバキアに大規模なSAP運用保守チームを有し、グローバル企業の運用保守の業務委託において実績が豊富です。人件費削減だけではなく、ニアショアも活用することで欧州のGDPR規制に対応できる最適な体制を提案しています。本ブログでは、FPTソフトウェアジャパンがハイブリッドグローバルデリバリー体制を採用し、SAP S/4HANA Cloudのシステム安定化にどのように貢献しているかを紹介します。

 

AMSとは

AMSは「Application Managed Service」の略であり、「アプリケーションの管理サービス」という意味です。
AMSは、企業が保有するSAPアプリケーションの運用保守を行い、システムの安定稼働を支援すると同時に、ビジネスプロセスの改善や効率化に向けた提案や実行支援を行うサービスです。これらのサービスには、システム運用保守やトラブル対応、ユーザーサポート、セキュリティ対策、システム改善のための提案や実装などが含まれます。

 

SAP S/4HANA Cloud プロジェクト概要・本番運用 

1.AMSプロジェクトの概要

今回は、私が実際にプロジェクト参画した事例を挙げさせて頂きます。このAMSプロジェクトは、昨年8月からスタートしたSAP S/4HANA Cloud の運用保守プロジェクトです。プロジェクトの主な目的は、システムの安定性向上です。エンドユーザーの時差やGDPRの規制に対応する必要があるため、グローバルデリバリー体制が必要となりました。対応にあたってFPT側では、日本、ベトナムとスロバキアに拠点リソースを用い、このグローバルデリバリー体制をFPTソフトウェアジャパンで採用しました。また、オンサイト、ニアショアとオフショアのハイブリッド体制を採用しました。

図1:AMS運用保守のハイブリッド体制

運用スコープは、サービスレベル2とレベル3の一部を対象としており、基本的にはSAPのベストプラクティスに基づいた運用設計思想に従っています。主な作業内容は以下の三つです。

  • ユーザからの問い合わせや要望に対応すること
  • システムの半期アップグレード後の権限メンテナンスやテストを行うこと
  • 軽微な改修や開発(帳票、レポート、BADI)を行うこと

 

2.AMSプロジェクト参画の経緯

AMSプロジェクトに参画したきっかけは、SAP S/4HANA Cloudへのデータ移行でした。プロジェクトに参画することで、SAP On-premiseと比べてSAP S/4HANA Cloudに興味関心があり、運用保守によって重要な価値を生み出すことができると考えました。また、ITサービスマネジメントのフレームワークであるITILの存在も知ることができます。そして、移行フェーズを成功させた後は、お客様との信頼関係を築くことができ、運用保守プロジェクトのリーダーに任命されました。この機会を最大限に活かし、全力で取り組んでいくつもりです。

 

3.プロジェクトのミッション

本プロジェクトのミッションはお客さまのSAP S/4HANA Cloudにおける課題を解決し、業務プロセスをFit to Standardに最適化し、システムの安定性を確保することです。また、マネージドサービス化を実施して、複数年にわたりお客様のコスト削減と品質向上に貢献することを目指しています。

 

4.SAP S/4HANA Cloudシステム本番運用

システムの本番運用に先立って、以下の準備を行いました。

  • FPTが有する業界のノウハウと、在庫購買管理、販売管理、会計のモジュールを応用できるようにすること
    欧州独自のビジネスプロセスについては、お客さまから引き継ぐこととする
  • 内外のコミュニケーションチャンネルであるTeamsとBacklogを確立すること
  • 定期作業に関する権限メンテナンスやPUT2.0でのユニットテストの操作ガイドラインの作成
  • システムのパフォーマンスを維持するため、内部SLAとしてKPIを策定
  • ベトナム拠点では日本語対応サポートを、またスロバキア拠点では英語対応サポートとし、それぞれのチケット処理プロセスを作成、内外での作業プロセスを統一。
    また、RASCIマトリックスを決め、各メンバーの役割を定義し、周知

図2:各拠点のチケットのハンドリングプロセス

図3:各拠点のRASCIマトリックス

プロジェクトの成果

私たちは日々PDCAサイクルを回しながら、システム運用を行っています。お客さまとFPTとのコミュニケーションはスムーズに進んでいます。各拠点は、クリスマス、年末年始、旧正月の長期休暇のスケジュールを調整して、業務をカバーするようにしています。日本はGDPRの適用外となっているため、必要に応じてスロバキア拠点の業務をオンサイトでサポートすることができます。

当初は、コンフィグレーションの調査をメインに行っていましたが、現在ではシステムのキャッチアップが進み、アプリケーション開発やフォーム修正などにも作業領域が拡大しています。特にシステムのアップグレード後に行うユニットテストについて、PUT2.0運用に取り組んでいます。テストの結果はSAPツールメンテナンス担当者にフィードバックし、改良点を反映することで、テストの工数を削減できると考えています。

また、よくある問い合わせや、SAP S/4HANA Cloud製品としての仕様による制約については、FAQファイルにまとめ、定期的に更新を行っています。主要な業務内容や作業時間をまとめた業務運用一覧SoWについても、週に一度レビューを行い、業務の改善に取り組んでいます。ユーザからの問い合わせや要望はまだまだ続いていますが、お客さまと協力して対応していきます。

 

AMSプロジェクトを通じた自己成長

AMSプロジェクトを通じて、私の英語のコミュニケーション能力が飛躍的に向上させることができました。なぜなら、スロバキアの同僚とのディスカッションは英語で行う必要があるためです。当初はミーティングの前に英語のスクリプトを準備しなければならず、発言ができませんでした。しかし、今では適時にアイデア交換ができるようになりました。また、ITIL4 Foundationの自習を通じてサービスマネジメントのスキルを向上させ、合格することができました。学んだことを実践に活かしながら、段階的にプロジェクトマネジメントのスキルを上達させていると感じています。

ロケーションが異なっていても、ALL FPT(日本、ベトナムとスロバキアを含む)で、お客様とともに1チームを組織し、エンドユーザーとお客さまのビジネス成功のため、日々全力を尽くすことができており、非常に良い経験を積み重ねられていると感じています。

 

終わりに

DXの実現のためにFPTを選んでいただいたお客さまには、改めて感謝を申し上げたいと思います。FPTは、ハイブリッドグローバルデリバリー体制を活用し、最大限のパフォーマンスを発揮し、課題解決に貢献できます。コスト削減と品質向上の両立に努め、お客さまの期待に応える全力を作ります。AMSプロジェクトの詳細な成果については、別の記事で共有したいと考えておりますので、是非ご期待ください。

今回はAMSハイブリッドグローバルデリバリー体制を採用し、SAP S/4HANA Cloudのシステム安定化貢献に関するアプローチ方針を解説しました。

より詳細な内容や、現システム上での課題などありましたら、当社のエキスパートチームに以下の「お問い合わせ」からご相談ください。