はじめに

2022年8月24日、不動産・建設業界の関係者さまを対象として、コロナ禍において直面した不動産業界の課題を解決し、包括的かつ効率的な変革を支援することを目的に、FPTが開発したソリューションパッケージをご紹介するイベントを開催しました。

イベントの詳細については、こちらからご確認いただけます。
本記事においてはイベント当日にお披露目した内容の一部をご紹介・解説します。

 

ソリューションパッケージ開発背景

コロナ過の影響により、不動産業界は、管理システムに関する多数の課題に直面しています。不動産経営では、多種多様な役割と関係者(プロジェクトの投資ポリシーやプロジェクト開発、デザイン、入札、建設、営業と運営など)の関わる様々な工程に分割される長期的なプロジェクトライフサイクルが特性的であるという要因で、いかに全ポートフォリオの進捗、経費と資源を管理して、顧客に提供するサービスの質を確保出来るかは不動産投資家が抱えている問題となります。

その故に、ビジネスプロセス最適化と同時に、不動産業界の特性と土地管理法に沿って開発されるERP管理システムの導入は、この業界の企業にとって、非常に肝心になります。SAP の建設・不動産管業者向けのEC&O (Engineering, Construction & Operations)ソリューションパッケージは、世界中に広く導入されていた効率的なソリューションの一つです。

税法、土地法と市場が国や地域によって異なることに対応して不動産事業の管理を効率化させるため、FPT ISは、S/4HANAプラットフォームベースのSAPの基幹ソリューションおよび特別モジュールを最新のMade-by-FPTソリューションと共に導入するサービスを提供しています。本サービスは、不動産事業に包括的かつ効率的な変革を支援します。

 

不動産業者向けソリューションパッケージのご提案

FPTソリューションパッケージは以下の主な要素に重点を置きます:

パート1: SAPのベストプラクティスにおける基幹モジュール: 以下の事業管理用の基幹モジュールはそのまま使用されます。

  • プロジェクト管理 (PS – Project system)
  • 購買およびロジスティクスの管理 (MM – Material management)
  • 不動産営業向け強化付きの販売管理 (SD – Sales and distribution)
  • プラント保全 (PM – Plant maintenance)
  • 財務会計 (FI – Financial)
  • 管理会計 (CO – Controlling)
  • 不動産プロジェクト向け強化付きの財務/資金管理

パート2: 不動産と建設の業界の複雑なビジネスプロセスの要件を満たして、価値連鎖に貢献出来るよう、FPTは以下のモジュールを開発します:

  • 実行可能性検査 (FS, FM)
  • 経費と契約管理 (CCM)
  • 不動産経費管理 (RE costing)

FPTの不動産向けのソリューションの全体像は、以下の図表で表示されます。

図表 1: FPTの不動産向けのソリューションの全体像

モジュール間の連携モデル

図表 2: モジュール間の連携モデル

不動産事業での様々な経験を経て、FPTが「経費と契約の管理(CCM)」と名付けられた専用的なモジュールを開発しました。このモジュールは、不動産プロジェクトを設立するプロセスの一つのキーバリューとなります。

では、CCMモジュールが、不動産プロジェクトのライフサイクルの全体の上で、実際どういう形で投資者と請負業者、サップライヤーの連携を円滑化に貢献するのかを見ていきましょう。CCMモジュールで管理される重要なデータに基づき、プロジェクト経費の管理と分析が効率的に行われます。

不動産プロジェクトライフサイクルの全体プロセス (図表3)から見てみると、CCMモジュールで不動産プロジェクトの全体デザインフェーズのプランニングステージから、デリバリーと運営フェーズに至るまでの経費を管理することが出来ます。

図表 3: 不動産プロジェクトにおけるCCMモジュール

 

図表4: CCMモジュールの主な機能

建設アイテム(Construction item – COI)

CCMモジュールの中で、建設アイテム (COI)は建設ワーク パッケージ デザインの作業分解構成図(WBS)となる重要なマスタデータで、以下の目的で使用されます:

  • プロジェクトスコープ全体向けの建設費見積の基線。
  • 各担当グループが組織的なステージのレベル別で管理できるプロジェクト費用を、ドリルダウンという順序で、表示します。
  • CCMモジュールの建設アイテム(COI)をSAP FIモジュールのG/L勘定と紐づけて、CCMモジュールとFIモジュールの統合性を確保します。

図表5: 建設アイテム (COI)

COI構造が定義された後、CCMモジュールは、建設費見積 (CCE) 機能を通じて、プロジェクトの実行ステージ全体での建設費用の見積にサポートします。

建設費見積 (Construction cost estimation – CCE)

図表 6: 建設費見積 (CCE)

建設費見積は、コンセプトから基本デザイン、技術デザイン、建設デザインなどのそれぞれのプロジェクトデザインフェーズに当てはまる複数バージョンとして、作成できます。そして、CCEはSAPのRelease Strategy機能により、複数の承認レベルで承認されることも出来ます。

建設費見積の最終バージョンが承認された後、費用見積は入札と契約の基本予算を計算するために使用されます。

 

入札パッケージプランニング (Tendering package planning – TPP)

入札パッケージは、投資者が契約を選定済みの請負者と結ぶための現在の条件に合ったアカウントに分割されます。入札パッケージプランニングの価格は、入札プロセを通じて落札価格を確定及び承認するための標準価値として用いられます。

図表7: 入札パッケージ計画 (TPP)

 

入札プロセスを通じて、入札評価結果、および工事請負契約締結前の入札パッケージの予算が確定されます。

図表8: 入札結果登録

 

FPTのソリューションでは、入札プロセスの落札者への報告メールの送信機能も提供します。

図表 9: 報告メール送信機能

 

入札プロセスで評価結果ができあがった際、CCMモジュールで契約を登録して、契約書の承認プロセスと実費管理がモニタリング出来ます。

 

工事請負契約 (Construction contract – CCE)

FPT独自製品である工事請負契約管理は、以下の事項を含む契約管理に関するほとんどのビジネスケースに対応出来ます:

  • 契約種類:主契約と補足契約
  • MSA(マスターサービス契約)又はCPO(建設発注)付きの契約
  • 契約条件: 前払/前受金…保証情報
  • 設計数量(BoQ): 建設材料目付き・無しの建設アイテム (COI)。

図表 10: 工事請負契約 (CCE)

 

ユーザーフレンドリーのExcelインポート/エクスポートUI機能もFPTのソリューションに含まれます。ユーザーは簡単にSAPシステムから設計数量の最新有効バージョンをデータ入力用のExcelテンプレートにエクスポートし、そのテンプレートにデータ入力を完了してからSAPシステムにインポートすることが可能となります。

 

 

図表11: CCMモジュールでの設計数量

署名済み契約書に基づき、ベンダー/請負業者は工事作業を行ったり、工事現場へ材料を配送したりします。契約ごとに、作業の完了分の価値を生産価値(Production Value)という機能で提出および承認されます。この生産価値は、後工程(支払依頼と請求)の基準データとなって、実費の記録と帳簿統合のために利用されます。

作業完了分の画面では、請求書作成だけでなく、送付された間違った請求書を回収することも出来ます。

請求伝票の照会画面で、請求伝票行を選択し、支払処理を行います。

図表 12: 請求伝票登録の画面

工事請負契約 (CCE)における生産価値の請求伝票転記から、システムは次の支払ステップのため、契約情報を自動的に作ってFICAに送ります。それで、以下の図表のように、ユーザーがSAPのコアトランザクションコードで支払ロットを作れます。

図表13: 支払ロットの支払指定

 

図表 14: 支払ロット

最終的に、建設プロジェクトの実費が分析され、会計帳簿に統合されます。ユーザーがトランザクションコードFPO4で契約債務を確認できます。又は、トランザクションコードFPL9で請負業者の債務を確認します。

図表15: 契約債務と請負業者債務

FPT独自開発のCCMモジュールの一番のメリットは、SAPコアモジュールとの統合性となります。契約と提供済みサービス/材料(生産価値)データの入力は、不動産業界におけるプロジェクト実費計算の前提条件です。

図表16: CCMモジュール と SAP コアモジュールの統合性

FPTのソリューションパッケージは、CCMモジュールで建設契約の実費が集計された後、全体プロジェクトの実費計算もサポートします。

建設工事エリアや、エリアのベースタイプなどの情報を、マスタデータとして、システムに登録する必要があります。

図表17: 建設エリア登録

 

商業不動産プロダクトの原価

不動産プロジェクトの物件タイプ別の原価計算を管理する必要性のきっかけで、FPTソリューションパッケージには、コストフローのモデルも含まれます。建設実費はCCMモジュールからの情報と共に、FIモジュールの(共通経費の)配賦からも集計されます。

図表 18: 物件別の単価計算

物件別の単価を計算する前に、FPTの開発したレポート上で表示される不動産プロジェクトの全ての実費を確認出来ます。

図表 19: ダイナミックなコストレポート

FPTによる機能強化付きのSAP CXからの販売情報は、以下のレポートのように表示されます。

図表 20: 販売結果

物件別の単価は以下のように計算されます:

図表21: 単価計算の結果

単価はFIモジュールのCOGM G/L勘定に転記することが出来ます。

図表 22: COGMの転記

FPTはアパートや店舗物件、別荘など、各物件種類の利益分析(収入-原価)をサポートするために、可視化された管理用レポートのテンプレートを用意しました。

図表23: 分析レポート

企業のデジタルトランスフォーメーションのニーズに応えるため、SAP CORE ERPの展開と共に、FPTは、多様な機能が含まれるエコシステムプラットフォームを開発しました。不動産業界に関する実践的な経験を生かしながら、価値連鎖間での繋がりのように、不動産業界向けの機能を追加し、企業のプロジェクト開発の経費削減に努めます。