現在の自動車産業では、1908年にヘンリー・フォード氏が自動車製造を工業化して以来、最も大きな変化が起きていることをご存知でしょうか。この大きな変化に対し自動車産業は、新たな成長機会を切り開き、そして同時にその大きな課題を認め、管理することが求められています。2019年現在、日本の自動車産業が抱えている主な課題を見てみましょう。

 

1.消費者行動劇的変化

ジャパンタイムズによると、日本の若い世代、特に都市に住む若者は公共交通機関の利用を好み、車の所有を完全に諦めているとのことです。  日本の若い世代は、自動車に熱狂的であった上の世代が高齢化している中で、その世代ほど自動車に熱心ではありません。日本の若い世代はもはや車をステータスシンボルと見なさず、車の所有を「経済的負担」と見なしています。自動車の所有と運転には、2~3年ごとの車検、自動車税、強制及び任意の保険、高い駐車料金、有料高速道路、ガソリン代など、多くの維持費用がかかります。(出典:日本自動車)

このことは、より多くの若い日本人の生活スタイルを車の所有から費用対効果が高い車の共有へと移行させています。このような自動車に対する個人の価値観の変化や経済的状況により、自動車へのロマンは失われつつある傾向があります。

 

 

この事実は、ビジネス上において構造的な障害となり、国内での自動車消費の減少につながっています。自動車販売台数のピークは1990年の「バブル」経済時で780万台、現在のピークはその約70%まで落ち込んでいます。大きな成長への期待はほとんどなく、自動車の売り上げは、消費税の引き上げに伴いさらに減少し続けるでしょう。

 

2.増加するデジタル需要

電話がスマートに進化したように、車も同様であると考えられます。自動車の運転にデジタルが応用されるにつれて、今日の車は予防安全アプリケーション、交通情報サービス、運転手支援、膨大なインフォテインメント機能が備えられています。これらのすべての新しいテクノロジーによる機能は、安全性や快適性、コネクティビティ、さらに究極的には将来の自動運転の実現を目指しています。 また、IHS Automotiveによると、世界規模でのコネクテッドカーの販売台数は2022年までに7,700万台を上回り、2014年の約1,900万台から年間平均成長率(CAGR)は19%に高まると予測されています。日本では、コネクテッドカー関連の市場は2020年までに1兆円にまで拡大する可能性があります。コネクテッドカーの台数の増加とプローブ情報やADASクラウドを使用したサービスの普及により、2025年には2020年の2倍近くの2兆円まで市場が拡大すると予測されています。(出典:株式会社矢野経済研究所)

コンサルティング会社のSBD Automotiveによると、現時点で日本の道路上でのコネクティビティが搭載された車両はわずか10%です。他国では、アメリカ49%、ヨーロッパ31%、中国20%となっており、大きな差が出てきています。日本の自動車メーカーにとっての脅威は、他国のメーカーが経験を積む中で、エコシステムやサービスプラットフォームなど、世界レベルで競合他社と競う必要が出てくることです。IHS Markitによると、2018年現在では、日本の自動車メーカーはユーザーを惹きつけるサービスを考え出すことに失敗しているとのことです。トヨタ自動車は2016年にコネクティビティの会社を設立し、2020年までに新車の70%にシステムを搭載することを目指しています。日産自動車では、2022年までに主要市場で販売されるNISSAN、Infiniti、Datsunなど全ての新型の車にコネクティビティを搭載する計画を発表しました。ホンダ自動車では現在目標は発表していませんが、新しいコネクティビティ技術の開発が進行中であることを発表しています。日産自動車の専務執行役員で研究・先行技術開発を担当する浅見孝雄氏は、「岐路は2020年から2025年になるでしょう。その期間を逃すと、大きな問題になります。」と述べています。

 

 

高まるコネクテッドカーへの需要に応えるため、日本の自動車企業は重点研究をシフトし、開かれた技術革新への追求が求められています。但し、彼らがこの需要からどのようにマネタイズ出来るかを考え出すことができるのであれば、これらの課題を機会に変えることができます。OEMではソフトウェアや他の技術のアップデートのような、より短期での製品およびサービス開発のサイクルを管理する必要があり、その一方で、ティア1サプライヤーは代替パワートレイン技術や積極的な安全性かつ、インフォテインメントのための革新的ソリューションにさらなる価値を付加する必要があります。

 

3.増加する人手不足

日本の自動車産業の他の重要な課題として、熟練した作業者の減少が挙げられます。国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の人口は2065年までに約1億2,700万人から約8,800万人に減少すると予測されています。この問題はすべての産業、特に日本の自動車産業に重大な影響を与えます。自動車関連企業に従事する人々は定年が近づき、自動車メーカーは若い世代の中から、その代替となる人材を確保することができませんでした。時間が経つにつれてこの課題は、日本の自動車産業にとって大きな問題になります。そして日本の若い世代が自動車や自動車部門に無感動かつ無関心でいることは、今後簡単に解決されることはないでしょう。

このことからも、徐々に日本の自動車メーカーと自動車部品サプライヤーは労働力不足により、これまでのビジネス管理、運営、さらに、製品戦略の変更を強いられることになります。また、雇用が減少している中で、効率と品質の最適化の課題に直面しています。これに対し、現在、ロボットや他の自動化手法が人手不足の課題に対する解決策として活用されています。

 

課題を解決し、将来の成長を遂げるために、日本の自動車関連企業は単に従来の伝統や習慣に頼ることはできません。戦略的優先事項を見直し、適切な投資とリソースを展開することにより、自動車業界以外のパートナーとの協力関係を構築する必要があります。

 

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